このコーナーでは、在校生が書いた作文をご紹介していきます。
今回は、今年度のARCスピーチ大会で第3位となった学生のスピーチ原稿を掲載いたします。
今日もみんな同じに見える
シン ヨテイ(中国)
みなさん、おはようございます。みなさんは今日、何を着ていますか?そして、ここに来る途中、電車やバスの中で見かけた通勤中の人々は、どんな服を着ていましたか?
今日もみんな、同じに見える——。
これは私が初めて日本に来て、通勤ラッシュの駅を見たときの感想です。黒や紺のスーツを着た人々がずらりと並ぶ光景は、まるで全員が同じ制服を着ているようで、本当に驚きました。
その中に、鮮やかな色の私服を着ている人が立っていると、とても目立ちます。観光客だと、すぐにわかってしまうほどです。
一方、私の母国・中国では、銀行や役所のようにスーツの着用が義務の職場を除けば、普段は私服で出勤する人のほうが多いです。ですから、逆にスーツ姿の人のほうが目立つことさえあります。
調べてみると、日本のスーツ文化は明治時代に西洋の影響を受けて広がったそうです。当時、スーツは「近代的で礼儀正しい装い」として受け入れられ、いまのビジネスシーンにまで続いているのです。
日本では、個性よりも清潔感や礼儀正しさが重視されているのではないか、と私は感じています。スーツはその象徴のひとつなのかもしれません。
私は美術学校出身なので、普段はもっと色鮮やかで自由なファッションに慣れています。ですから最初は「毎日同じような服を着て、退屈にならないのかな…?」と思いました。けれどよく観察してみると、同じ黒いスーツでもネクタイの色、靴の形、シャツの襟の違いなど、小さなファッション要素が詰まっているのです。いわば「間違い探しゲーム」のようで、ちょっと楽しくなってきました。
そうしているうちに、私もだんだんスーツ文化に慣れてきました。毎日スーツ姿の人々と一緒に通勤していると、不思議と安心感さえ覚えるようになったのです。そして今日はご覧の通り、みなさんの前に立つにあたって、私もスーツを着てきました。
最近では服装が自由な職場も増えていますが、それでもスーツは日本社会の一部として根強く残っていると感じます。
そして何より、毎朝『今日は何を着よう?』と悩まなくて済む――。
そのシンプルさこそが、人々の生活を支える大きな力になっていると思います。